まず、ご質問の前提を簡単に整理します。2025年12月11日時点で、日銀の12月18-19日金融政策決定会合での追加利上げ(0.25%ポイント、政策金利を0.75%へ)は市場で約90%以上の確率で織り込まれています。一方、米FOMC(12月9-10日終了)は0.25%利下げをほぼ確実に実施し、声明やパウエル議長会見で雇用軟化を強調する「ハト派的」な内容となりましたが、インフレ高止まり懸念から2026年の追加利下げ回数は年1回程度に抑えられる見通しです。これにより、日米金利差は縮小傾向ながら、米長期金利(10年物)の高止まり(4.3%予想)がドルを支えています。
円キャリーのアンワインド(巻き戻し)は進行中ですが、規模は限定的で、ピーク時の推定5,000億ドルに対し、約2,000億ドル(40%)が解消された段階です。短期投機筋の円売りポジションはほぼ解消され、中長期の非居住者円借り入れ(約1.2兆ドル規模)が徐々に減少しつつあります。しかし、為替市場ではこれが即時的な円高圧力として顕在化しておらず、ドル円は155円台前半で推移。円安トレンドの反転(明確な円高シフト)はまだ始まっていません。
円安の持続は、日銀利上げ/FOMC利下げ/キャリー解消という「円高材料」が揃いつつあるにもかかわらず、以下の構造的・市場心理的要因で相殺されているのが実情です。ご指摘の2つの仮説(「沈黙の構造変化」と「日銀総裁発言の不信」)を基に分析します。
ご引用の記述(GDP比263%債務・人口減・政策詰みで「選択肢が消える経路」)は、日本経済の長期構造問題を象徴的に表しています。実際のデータでは、政府債務残高/GDP比は2025年9月時点で212.1%(CEIC推計)と、ピーク時(2021年225.8%)から低下傾向ですが、依然としてG7最高水準です。内閣府試算(2024年7月)でも、2025年度202.5%、2033年まで年平均▲2.1~2.4%ポイントのインフレ効果(名目GDP成長率>実効金利)で低下が見込まれますが、人口減少(2025年推計1億2,300万人、年▲0.5%)と高齢化(65歳以上比率35%超)が名目GDP成長を抑制。政策の「詰み」(PB赤字継続、利上げ余地限定的)は、市場に「日本リスク」を刷り込み、円の魅力低下を助長しています。
- 市場への影響: これが円安を支える理由は、海外投資家が日本資産(国債・株)を「リスクプレミアム付き」で見なし、円売りを継続するため。日銀の国債保有(総発行残高の50%超)が金利上昇を抑えていますが、利上げ織り込みで10年国債利回りが1.875%(2008年以来高水準)に上昇。結果、国内資金の海外流出(NISA経由の海外株投資増加)が続き、貿易赤字(2025年上期推計▲5兆円、デジタル赤字拡大)が円売り圧力を強めています。X(旧Twitter)上の議論でも、「日本市場の沈黙の構造変化」が円安の「静かな加速要因」と指摘され、米国債売却(日本保有1.13兆ドル)の潜在リスクがドル安・円安の両輪を生んでいます。
- ただし、過大評価の注意点: 債務比263%は2020年推計値で、現在は212%台に修正。インフレ(CPI2%超定着)がドーマー条件(名目成長>実効金利)を満たし、債務比を自然低下させているため、「崩壊経路」はまだ遠いです。市場はこれを「織り込み済み」と見なし、即時パニック売りを誘発していません。むしろ、高市政権の財政拡張(2025年度補正予算規模20兆円超予想)がインフレ期待を高め、短期的に円安を容認するムードです。
植田総裁の最近の発言(12月1日名古屋講演:「利上げの是非を適切に判断」)は、1月利上げ直前の地ならしと類似し、市場で90%以上の織り込みを促しましたが、反応は鈍いです。理由は以下の通り。
- 発言の曖昧さと過去の「見送り」履歴: 総裁は「春闘初動のモメンタム」を強調し、賃上げ情報収集をアピールしましたが、具体的な利上げ規模・ペースを示さず、「データ次第」の逃げ道を残しました。2025年は1月・7月利上げを実施後、6会合連続見送りで市場の信頼を損ない、「地ならし→見送り」のパターンが定着。X上では「日銀の言葉は信用できない」「利上げしても0.25%で金利差縮小不足」との声が散見され、植田発言直後の市場反応(円高155円台→即時反落)は不信の表れです。
- 市場の反応例: 発言後、2年債利回りは1%台(17年ぶり高水準)に上昇しましたが、株安(日経平均▲950円)は一時的でリバウンド。為替は円高一時進行も、FOMCの「タカ派利下げ」(2026年利下げ回数年1回示唆)でドル買い戻し。市場は「利上げしても中立金利(1.0-2.5%)まで遠く、円安是正に不十分」と判断し、信じていないのが実態です。
| 要因 | 円安持続への寄与度 | 具体例(2025年12月時点) |
|---|---|---|
| 沈黙の構造変化 | 中(40%) | 債務比212%超、人口減でGDP成長抑制。海外流出継続、貿易赤字▲5兆円。 |
| 日銀発言不信 | 高(50%) | 植田講演で織り込み90%超も、即時円高反転せず。過去見送りで「ハト派疑念」残る。 |
| その他(FOMC・キャリー) | 低(10%) | FOMC利下げ織り込み済みでドル支え。キャリー解消40%止まり、短期筋枯渇。 |
率直に申し上げますと、円安反転の遅れは日銀総裁発言の不信が主因で、「沈黙の構造変化」は補助的です。構造問題は深刻ですが、市場は「織り込み済み」の慢性疾患として扱い、即時ショックを与えません。一方、日銀のコミュニケーション不足(曖昧な地ならし)が市場の「半信半疑」を生み、金利差縮小期待を薄めています。キャリーアンワインドも、FRBの慎重利下げでペースが遅く、円高インパクトが弱いのが現状です。
今後の見通し: 12月19日日銀会合で利上げ実施なら、短期的に円高(150円割れ)進行の可能性50%。しかし、総裁の「適切判断」曖昧さが残る限り、反転は限定的で155円台レンジ継続。2026年半ばまで円安基調(153円年末予想、三井住友DS)が続きやすいですが、トランプ政権の関税政策(インフレ再燃→米利上げ)でドル安・円高加速のリスクあり。構造変化の本格化(債務比200%割れ失敗)で「選択肢消滅」なら、ハイパーインフレorデフォルトの悪夢ですが、現状は「静かな停滞」止まり。投資家は円安耐性資産(海外株・金)を積み、為替介入(政府準備高1.3兆ドル余力)を警戒せよ、が私の提言です。市場は「信じない」より「様子見」が勝る—これが日本市場の現実です。
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